2018年05月01日

かぎろひ番外編・三本松の安産寺・深野散策

 最近「かぎろひ」の番外編が多いようですが、今日もその一つです。近鉄大阪線の「三本松」へ
行ってきました。今回は昔の「ナラ咲く」でブログ仲間だった「なむさいじょう」さんも一緒でした。
 奈良の歴史に強いので私より年配の方かと思っていましたら、まだ現役で働いておられるとの
事でした。連れはK女史とF女史です。お二人とも健脚です。4月30日のウォーキングでした。

 先ずは「近鉄大阪線三本松駅」で合流し、最初の目的地である「安産寺」へ向かいました。ここ
は「子安地蔵菩薩」で有名なお寺のようです。また拝観には事前の予約が必要で、境内に入ると
一人の地元の方から挨拶していただきました。早速堂内へ入ると先ずはビデオでの紹介があり
ました。

 ビデオによると昔大嵐(台風?)が来て、川から地蔵菩薩が流れてきたようです。その菩薩様を
救い出して近くのお寺に運ぼうとしたところ、地蔵様が急に重くなって「ここで休みたい」と言われ
たようなので、村人はそれ以来そこにお堂を立ててお祀りしているとのことでした。

 安産寺と言う名前ですが、建物は地区の集会所と言った感じでお寺には見えませんでした。

 このお寺は住職の方がいない寺で、地域の方が本尊をお守りしておられるようです。年に数回
の法要の時には近くの寺からお坊さんが来られて読経されるようです。地域の住民がお守りして
いるということがユニークさを醸し出している一つの理由のようでした。

 ビデオでお寺や子安地蔵菩薩の由来を概略理解したところで、実際の安置所へ案内していただ
きました。この時初めての経験ですが「マスク」を手渡されました。つまり手の届く場所まで案内し
ていただけるということから「マスク」が必要のようでした。ある意味感激です。

 堂内の奥に階段があり、その上の別の建物に安置されていました。靴を脱いでスリッパに履き
替え鍵を開けていただいた蔵の中に入っていきました。中には「子安地蔵菩薩」が燦然とと輝い
て私たちを迎えてくれました。像の手前には経台やロウソクなど読経に必要な仏具が並んでいま
した。

 先ずは正面から菩薩像をゆっくり眺めて、その後背後へ回って後ろ姿も拝ませてもらえました。
 端正な顔つきで静かに前を凝視する姿に圧倒されました。左手に宝珠を持ち右手は何も持たず
に自然に垂らしている状態でした。着衣は肩から腰、足元まで自然に垂らした模様で漣波式という
室生寺様式とのことでした。

 このことからも判るようにこの「子安地蔵菩薩」は最初は室生寺にあったようです。室生寺金堂の
釈迦如来本尊と様式が非常によく似ていることがその理由のようです。またその本尊の右側にある
地蔵菩薩の板光背が不釣り合いで、この安産寺の子安地蔵菩薩と合わせるとぴったり一致するこ
とからいずれかの時期に室生寺から移されたようです。

 室生寺から返還の依頼も来ているようですが、地域の方は自分たちの守り神だということで手放
したくないようで、そのことからも住民の方の保存に対する意識は高いようです。夏になると毎年
境内で盆踊りが開催されるということも地域のつながりが重視されているなと感じました。

 昭和14年には「国宝」に指定されていましたが、戦後「文化財保護法」が制定され昭和25年に
国の「重要文化財」に指定されたようです。国や県の博物館から重要な仏像なので地元で保管す
るのではなく博物館に移設するように何度も説得されたようですが、その都度返してもらっていた
ようです。

 最終的には地元の洞出さんと言う方が、「この村でしっかりしたこの像を保管できる蔵を造れば
村人で管理できる。」と理解してお堂の建設を働きかけられ地元の浄財などを中心に建立された
ようです。ご案内頂いた地元の方に洞出さんの現在のご様子を伺ったところ昨年お亡くなりになら
れたとのことでした。自分は洞出さんの甥っ子ですと言われていました。

 地元の伝承では嵐の日に川から流れてきたとのことですが、指の一本も折れていない状態で
川から流れてきたとは到底思えないことから、何らかの事情で舟か筏に乗せられて運ばれてきた
のではないかと推測されます。

 前出の方の話を少し膨らませると近くにあった「正福寺」は室生寺の末寺で、そこの住職が室生
寺でも位の高いお坊さんだった時に内部で諍いがあり「地蔵菩薩」を船で運び出して、三本松へ
持ってきたが、さすがに正福寺(末寺)に置くわけにもいかず近くにお堂を立ててお祭りすることに
したのではないかと想像します。正福寺は廃寺となって今は存在しないようです。

 本当のところは伝承しか残っていなくて、室生寺でも明確な言伝えがないことから上記のような
推察しかできないのではないかと思います。村人が大事に扱ってくれているということから、地蔵
様も満足してあの温和な顔を残してくれているのではと思いたいところです。

 室生寺の「本尊釈迦如来立像や十一面観音立像」が国宝であることから、この子安地蔵菩薩も
室生寺へ持って行けば国宝に指定されるのかもしれないと老婆心ながら思いました。

 地元の係りの方にじっくりと話を聞いた後は、次に向かう深野地区についてもついでに訪ねてし
まいました。地元の大きな地図を前に丁寧に行先を教えて頂きお礼のあいさつを交わして安産寺
を後にしました。

 深野地区は事前の情報によれば「にほんの里100選」に選ばれた所で、ササユリや段々畑が来
訪者の心を満たしてくれそうでした。案内頂いた道順を頼りに深野地区に進み「神明神社」へ来た
ところで、お昼の時間でしたので弁当に食らいつきました。

 深野地区に入った直ぐの場所には「ささゆり庵」という茅葺の古民家が宿泊施設を営んでいました。
 ネット情報では茅葺古民家一棟貸し(全4室 : 囲炉裏の間、ロフト、蔵1/2F)という触れ込みで1日
一組限定で最低2名6~7万円とのことでした。外人さんの利用が多いようでレストランでは頼めば
ミシュランのシェフが腕を振るってくれるようでした。その場合食事だけで一人前2~2.5万円でした。
 もちろん部屋数も多いので多少の団体さん(一組)なら泊まれるようでした。
 
 ササユリの時期には少し早かったようですが、段々畑では代掻き(しろかき)が始まっており、一部
の田んぼでは既に田植えが終わっていました。食事も終わって帰路につこうとするとF女史から、
もう少し足を延ばして笠間峠を越えて名張市の赤目口経由で帰りたいとの提案がありました。

 時計を見るとまだ13時過ぎで多少余裕もありましたので、皆で賛成し足を延ばすことに決めました。
 急遽方向を180度変更して北の笠間峠に向うことになりました。当然ここからは地図も用意してい
ないので、安産寺でいただいた概略の地図を頼りに進むことになりました。

 ただやはり山道までは載っていませんでしたので、小生のスマホに入れていた「YAMAP」を頼りに
、なるべく自動車道を避けて歩けるような道を選んで進みました。途中の山道で「笠間峠」の道標が
目に入りました。ここはお水取りで有名な東大寺二月堂の「お松明」が通る道でした。「なむさいじょ
う」さんが早朝歩き始めたころにその話をされていたばかりでした。

 その笠間峠からは完全な山道になりましたが、YAMAPがちゃんとコースを示していましたので、
その通りに歩きました。歩き始めて直ぐに「東大寺二月堂お水取り・松明調達の道」と書かれた道標
が眼に入ってきました。「なむさいじょう」さんとK女史は毎年参加されているので大変興味を持って
写真に収めておられました。

 しばらく下山すると車道に出ますが、また山道を歩いてショートカットのような形で下山できました。
 たぶん車道を歩くのに比べれば半分以下の距離と時間で下山できたと思います。本来は近鉄赤
目口まで歩く予定でしたが、またF女史から当初予定の「青葉の滝」を見て三本松へ戻ろうとの提案
があり、再度その提案に乗りました。

 お蔭で宇陀川の畔を上流に遡り新たな発見もありながら、また近鉄線が横を走っていたので皆で
撮り鉄の気分も味わいながら「青葉の滝」へ到着しました。元々ここが最後の見学予定地だったので
そこでマイナスイオンを十分に浴びて三本松への帰路につきました。

 三本松では駅近くの「道の駅宇陀路室生」で瓶ビール(地ビール)とつまみを買い込んで即席の打
ち上げパーティとなりました。予定の倍くらい歩きましたが、皆さん健脚揃いだったので無事にゴール
することができました。その後、三本松から電車に乗り込んで近鉄八木駅で解散となりました。


                   安産寺への畦道です。
かぎろひ番外編・三本松の安産寺・深野散策


        安産寺ですが、実際は地区の集会所としても使われていました。
かぎろひ番外編・三本松の安産寺・深野散策


           安産寺の「子安地蔵菩薩像」です。(ネットより拝借)
かぎろひ番外編・三本松の安産寺・深野散策


               外人客がメイン?の「ささゆり庵」です。
      こんな田舎にと言う感じですが、近くにはヘリポートもあるようです。
かぎろひ番外編・三本松の安産寺・深野散策


           深野地区にあった「にほんの里100選」の看板です。
かぎろひ番外編・三本松の安産寺・深野散策


         深野地区の中心地「神明神社」です。ここで昼食を摂りました。
かぎろひ番外編・三本松の安産寺・深野散策


           予定を変更して「笠間峠」経由で帰ることになりました。
            ここからは完全な山道となりました。皆さん大喜び。
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           笠間峠から少し降りたところに、この看板がありました。
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               最後の目的地「青葉の滝」の看板です。
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       「青葉の滝」です。かなりの水量でマイナスイオンを十分に浴びました。
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この記事へのコメント
今日は、ゴールデンウイークでもこのような歴史探訪ウォーキングなら混みあわなくて良いですね。

子安地蔵とか子安大師の信仰は昔は出産に大きなリスクが有ったからでしょうね。
私の郷里には子安大師がありました。
PANDORA さんが巡礼された四国八十八カ所の61番香園寺がそのように呼ばれ、
子供を抱いた弘法大師の像が祀られていたと思います。
川や海から仏像などを拾い上げてお祀りする話も各地にあるようです。
神奈川県の川崎大師も海から拾い上げた弘法大師を祀ったのが始りだそうです。

それにしても、重要文化財に指定されているような菩薩像を、
無住のお寺に安置し地域の住民で守っている安産寺は大変特殊な存在と思います。

番外編の例会でも打上パーティーは付きものですね。
旧知の方ともお会いできて楽しかったことでしょう。
Posted by dojyou38 at 2018年05月03日 14:21
dojyou38さん
 こんにちは!
 このお地蔵さんは元は「地蔵菩薩」と呼ばれていましたが、ここの村人の
出産で大変なことがあったようで、地蔵菩薩にお詣りすると無事出産できた
ということです。それ以来「子安地蔵菩薩」と呼ばれるようになったようです。

 確かに61番香園寺の本堂には子供を抱えたお大師様がおられました。
 安産信仰の中心地として全国に信者がおられるようですね。

 地元の人たちの思いが通じて立派なお堂(空調の効いた蔵)を建立し、
毎年手厚くお詣りされているようです。

 
Posted by PANDORAPANDORA at 2018年05月03日 16:50
こんばんは!

とても内容の濃い歴史探訪ハイキングとなり、大変楽しかったです。
また機会があれば、ご一緒させてください。
ワタクシのブログでリンク張らせていただきましたので、よろしくお願いいたします。
いろいろとお世話になり、ありがとうございました。
Posted by なむさいじょう at 2018年05月04日 00:33
なむさいじょうさん
 お早うございます!
 ブログ読ませてもらいました。簡潔に良くまとまっていますね。
 奈良愛の心がにじみ出ていて癒されました。
 小生のブログにもリンクを張らせて頂きました。これからも時々
お会いしたいですね。
Posted by PANDORAPANDORA at 2018年05月04日 08:47
おはようございます。

やっとブログアップしました^^;
その節はありがとうございました。PANDORAさんの「YAMAP」を思い出しながら記事を書きましたよ。

リンクも貼らせていただきましたので、ご了承くださいね。
楽しい一日でした。
Posted by かぎろひ at 2018年05月16日 08:23
かぎろひさん
 こんばんは!
 記憶を思い出しながらのブログは大変ですね。かぎろひさんは八面六臂の
ご活躍なのでブログにまで手が回らないのが実情だとお察しいたします。

 リンクの件はいつもOKです。たまには番外編もいいですね。
 今月は所用が重なり本編にも参加出来なくて申し訳ありません。
Posted by PANDORAPANDORA at 2018年05月16日 22:11
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