2017年09月29日
奈良歴史ウォーク(9-2)・亀の瀬
今回のウォークは前半が地すべり多発地域の視察でした。最近は大雨の影響で日本各地で
地すべりが発生していますが、ここ「亀の瀬」は有史以前から発生していた稀有な地域です。
実際の場所は大阪府と奈良県の県境で、生駒山系と金剛山系がぶつかり合う場所でその間
を大和川が流れています。特に生駒山系から大和川へ流れ落ちる地すべりが過去何度も被害
を起こしていたようです。
データ的には4万年前の痕跡もあり、実際にはその前から発生していたようです。明治以前の
地すべりの記録は残されていなくて、明治以降に記録が現れてきています。最初は明治36年、
次に昭和6~8年(32ha)、昭和42年(50ha)に大規模な地滑りが発生しています。
地すべりの被害は田畑や家屋が流されることですが、それ以上に大変なことは大和川がせき
止められたり隆起したりして、水の行き場がなくなることです。結果として奈良盆地に水が溜まり
過去にも甚大な被害がありました。昭和7年は大和川上流部の王寺町等が水没しました。
この状態で更に雨が続くと大和川が決壊し大阪平野に大量の水が流れ込むことになります。
推定では奈良県側の被害より大阪側の被害が9倍ほど多くなると予想されています。この事態
を回避するために昭和37年より国の直轄事業として地すべり対策事業が実施されました。
昭和7年の時は全国から多い日で一日に2万人の見学者が来たようで、露店商が店を出すよ
うな盛況ぶりだったようです。また昭和42年の地すべりでは全世界から研究者が来日し大規模
な地すべりの様子を見学していったようです。
足掛け50年ほどの年月をかけて平成20年代の前半に完成を見たものです。工事の内容の詳
しい説明はここでは省きますが、大きくは土壌の水はけを良くする治水工事と土壌の下の固い
岩盤まで届く杭打ちが主な対策でした。杭(深礎)の直径は6.5m、長さは最大96mで合計170
基、規模の小さな鋼管杭が560本と世界最大級の工事が実施されました。
工事半ばの昭和60年頃からは地盤の移動量がかなり小さくなり、結果としてそれ以降には大
きな地すべりは発生していないようです。「亀の瀬地すべり」の話は今回説明を受けるまで全く
知りませんでした。国土交通省の方の現地案内も含めた丁寧な説明で記憶に残るウォークに
なりました。
その後食事をして、大和川流域を王寺方面へウォーキングしながら幾つかの寺社(亀瀬八幡
神社、関の地蔵、磐瀬の社、神奈備神社、龍田大社、多聞地蔵、久度神社)をお参りしました。
最後は王寺駅で解散となりました。
排水トンネルの入り口で「亀の瀬」の亀が描かれています。

排水トンネルです。全長7,236mの長さです。

集水井(排水を集める井戸)で54基あります。下から見上げたものです。

平成16年の工事で見つかった国鉄関西線のトンネル崩落現場です。
明治時代の鉄道遺構として一部を保存したものです。

鉄橋の下に補強の鉄橋が見えます。

龍田大社の立派な鳥居です。広島県宮島の厳島神社の鳥居と同じ形ですね。

地すべりが発生していますが、ここ「亀の瀬」は有史以前から発生していた稀有な地域です。
実際の場所は大阪府と奈良県の県境で、生駒山系と金剛山系がぶつかり合う場所でその間
を大和川が流れています。特に生駒山系から大和川へ流れ落ちる地すべりが過去何度も被害
を起こしていたようです。
データ的には4万年前の痕跡もあり、実際にはその前から発生していたようです。明治以前の
地すべりの記録は残されていなくて、明治以降に記録が現れてきています。最初は明治36年、
次に昭和6~8年(32ha)、昭和42年(50ha)に大規模な地滑りが発生しています。
地すべりの被害は田畑や家屋が流されることですが、それ以上に大変なことは大和川がせき
止められたり隆起したりして、水の行き場がなくなることです。結果として奈良盆地に水が溜まり
過去にも甚大な被害がありました。昭和7年は大和川上流部の王寺町等が水没しました。
この状態で更に雨が続くと大和川が決壊し大阪平野に大量の水が流れ込むことになります。
推定では奈良県側の被害より大阪側の被害が9倍ほど多くなると予想されています。この事態
を回避するために昭和37年より国の直轄事業として地すべり対策事業が実施されました。
昭和7年の時は全国から多い日で一日に2万人の見学者が来たようで、露店商が店を出すよ
うな盛況ぶりだったようです。また昭和42年の地すべりでは全世界から研究者が来日し大規模
な地すべりの様子を見学していったようです。
足掛け50年ほどの年月をかけて平成20年代の前半に完成を見たものです。工事の内容の詳
しい説明はここでは省きますが、大きくは土壌の水はけを良くする治水工事と土壌の下の固い
岩盤まで届く杭打ちが主な対策でした。杭(深礎)の直径は6.5m、長さは最大96mで合計170
基、規模の小さな鋼管杭が560本と世界最大級の工事が実施されました。
工事半ばの昭和60年頃からは地盤の移動量がかなり小さくなり、結果としてそれ以降には大
きな地すべりは発生していないようです。「亀の瀬地すべり」の話は今回説明を受けるまで全く
知りませんでした。国土交通省の方の現地案内も含めた丁寧な説明で記憶に残るウォークに
なりました。
その後食事をして、大和川流域を王寺方面へウォーキングしながら幾つかの寺社(亀瀬八幡
神社、関の地蔵、磐瀬の社、神奈備神社、龍田大社、多聞地蔵、久度神社)をお参りしました。
最後は王寺駅で解散となりました。
排水トンネルの入り口で「亀の瀬」の亀が描かれています。

排水トンネルです。全長7,236mの長さです。

集水井(排水を集める井戸)で54基あります。下から見上げたものです。

平成16年の工事で見つかった国鉄関西線のトンネル崩落現場です。
明治時代の鉄道遺構として一部を保存したものです。

鉄橋の下に補強の鉄橋が見えます。

龍田大社の立派な鳥居です。広島県宮島の厳島神社の鳥居と同じ形ですね。

この記事へのコメント
これだけ大規模で長期間にわたる地すべり対策工事のこと全く知りませんでした。
昭和42年と言えば、私は大阪に勤務だったのに全く迂闊でした。
このような大規模な公共工事では何らかの反対運動などが起こるのですが、
この工事についてはそのようなことが無かったんでしょうね。
鉄橋の補強鉄橋めずらしいです。
他では見たことがありません。
様々なことを学んだ有意義なウォーキングになったことでしょう。
昭和42年と言えば、私は大阪に勤務だったのに全く迂闊でした。
このような大規模な公共工事では何らかの反対運動などが起こるのですが、
この工事についてはそのようなことが無かったんでしょうね。
鉄橋の補強鉄橋めずらしいです。
他では見たことがありません。
様々なことを学んだ有意義なウォーキングになったことでしょう。
Posted by dojyou38 at 2017年10月02日 18:51
dojyou38 さん
こんばんは!
私も昭和42年頃は京都の学校でしたが、地すべりのことは記憶にありません。
規模的には幅1,000m、長さ1,000mの斜面でブドウ畑などがあったようです。
山間なので住宅などは僅かしかなく地すべりの規模が大きいので反対はなかったようです。
それよりも大阪平野を水害から守るという思いが国の直轄事業として取り組んだ
一番の理由だったようです。
また、補強鉄橋の台座もかなりの大きさでした。大阪に寄られた時は一度
見学に来てください。
案内したいところですが、排水トンネルなどの見学は10人以上の団体でないと受け付けて
くれないようです。そのため外からは工事の規模や内容は殆ど伺い知ることができません。
こんばんは!
私も昭和42年頃は京都の学校でしたが、地すべりのことは記憶にありません。
規模的には幅1,000m、長さ1,000mの斜面でブドウ畑などがあったようです。
山間なので住宅などは僅かしかなく地すべりの規模が大きいので反対はなかったようです。
それよりも大阪平野を水害から守るという思いが国の直轄事業として取り組んだ
一番の理由だったようです。
また、補強鉄橋の台座もかなりの大きさでした。大阪に寄られた時は一度
見学に来てください。
案内したいところですが、排水トンネルなどの見学は10人以上の団体でないと受け付けて
くれないようです。そのため外からは工事の規模や内容は殆ど伺い知ることができません。
Posted by PANDORA
at 2017年10月02日 21:53

福岡は今日も1日中、雨とで突風に悩まされました。バイクに乗って出勤していた女性が風にあおられ、転倒し、ろっ骨を折る大けがをしたほどです。
朝倉でも、ご存じのように集中豪雨でなだれ(地すべり)で大災害がおきています、今もって復興の途中ですが・・・。
どちらにしましても天災はこわいですね。
朝倉でも、ご存じのように集中豪雨でなだれ(地すべり)で大災害がおきています、今もって復興の途中ですが・・・。
どちらにしましても天災はこわいですね。
Posted by 日々是好日 at 2017年10月02日 22:04
日々是好日さん
こんばんは!
日本列島は急峻な山に囲まれて最近は大雨が多いので
どこで地すべりが起きてもおかしくない状況ですね。
「亀の瀬」のような工事がどこでも出来る訳ではないで
しょうが、地すべりが繰り返すようであれば対策をとる必要
も増えてくるでしょうね!
こんばんは!
日本列島は急峻な山に囲まれて最近は大雨が多いので
どこで地すべりが起きてもおかしくない状況ですね。
「亀の瀬」のような工事がどこでも出来る訳ではないで
しょうが、地すべりが繰り返すようであれば対策をとる必要
も増えてくるでしょうね!
Posted by PANDORA
at 2017年10月02日 22:57

おはようございます。
ご参加と丁寧な記事をありがとうございます。
亀の瀬地すべり現場見学、外からはわからないだけに、貴重な体験になりましたね。前から興味はあったのですが、ようやく実現できて、うれしい限りです。
大和川河川事務所主催で年に1~2回見学会を実施されているようです。
また、参加団体があれば、便乗するのも可とのこと。申し込んでおいたら、連絡してくれるかもです。
今回、私どももいろいろとご配慮いただきましたので、お礼の気持ちの品を持っていったのですが、受け取ってもらえませんでした^^;
ご参加と丁寧な記事をありがとうございます。
亀の瀬地すべり現場見学、外からはわからないだけに、貴重な体験になりましたね。前から興味はあったのですが、ようやく実現できて、うれしい限りです。
大和川河川事務所主催で年に1~2回見学会を実施されているようです。
また、参加団体があれば、便乗するのも可とのこと。申し込んでおいたら、連絡してくれるかもです。
今回、私どももいろいろとご配慮いただきましたので、お礼の気持ちの品を持っていったのですが、受け取ってもらえませんでした^^;
Posted by かぎろひ at 2017年10月03日 07:50
かぎろひさん
先日はご苦労様でした。予定通り雨の中のハイキングでしたが、
昼からは殆ど止んだようで神通力が少し弱くなられたのかな?
ブログでは後半の神社仏閣を端折って「亀の瀬」オンリーになり
ました。規模の大きさに圧倒されたのがその原因です。世の中には
まだまだ知らないことが沢山ありますね。これからも楽しみです!
官公庁は収賄には敏感ですからね。フォローに感謝いたします!
先日はご苦労様でした。予定通り雨の中のハイキングでしたが、
昼からは殆ど止んだようで神通力が少し弱くなられたのかな?
ブログでは後半の神社仏閣を端折って「亀の瀬」オンリーになり
ました。規模の大きさに圧倒されたのがその原因です。世の中には
まだまだ知らないことが沢山ありますね。これからも楽しみです!
官公庁は収賄には敏感ですからね。フォローに感謝いたします!
Posted by PANDORA
at 2017年10月03日 08:34
